エンボス金型の温度管理・制御
エンボス金型の温度は写真真ん中に見える制御装置を使用しています。
写真真ん中にある四角いボックスがエンボス金型に挿入されているヒーターを制御している制御装置です。
理科工業㈱の温度コントロール LABOXです。
制御装置の背面からは、温度センサー2本(上型下型用)、ヒーターの動力線が上型下型用それぞれ4本の8本、合計10本の電線がつながります。
温度センサーで金型の温度を検知し、設定温度より低ければヒーターに電流を流し、高ければ電力供給が止まります。
1台の制御装置で上下の金型の温度を別々に管理することができるので、上型を70度、下型を75度のような設定も可能です。
下型は上型よりも冷えた材料に接触する時間が長くなるので温度低下が起きる場合があります。
そのため下型を上型よりも若干高めに設定する場面が多々あります。
多くのエンボス製品は温度の高い、低いの差こそあれヒーターで暖めます。
エンボス型の加熱の必要の無い(冷感エンボス)エンボス製品もありますが、室温や材料の温度によるエンボス高さのバラツキを防ぐために上下の金型を30℃程度で保持します。
一般的な製品をエンボスする場合には70℃に設定します。
しかし、耐熱クリックエンボス製品では、100℃を超える高温でのエンボス作業を強いられる場合があります。
金型に触ると火傷するほどの熱さです。
金型温度は、狙っているエンボス高さ、材質、印刷時の乾燥温度、耐熱エンボスか否か等、その製品の条件によって個々に設定値を決めています。
エンボス機の保護と制御装置の話
エンボス機の保護についてです。
エンボス機の保護ってなんだ?と思われる方もいると思います。
重要な事なので説明しておきます。
30kg~50kgほどの鉄の塊であるエンボス金型を70℃~100℃まで熱するわけですから、その熱量は相当なものです。
もし金型を直接エンボス機に取り付けた場合、金型に供給した熱エネルギーは金属部を伝ってエンボス機を高温にしてしまいます。
金属は熱せられることで膨張しますから、エンボス機の駆動部分の不可が大きくなり、最悪カジってしまい駆動不能になってしまいます。
またエンボス機の制御基板上の半導体やいろいろな素子に悪影響を与え(抵抗値が上がるため)誤動作を誘発したり、最悪溶ける、つまり破損してしまう事も考えられます。
エンボス加工のページのエンボスの動画、またはこのページ上部に掲載した写真をよくご覧頂くと、下型を置く正直台とエンボス機の間、上型を取り付ける天板とエンボス機の間にそれぞれ2枚のコンクリートブロックが取り付けられていることを確認できると思います。
比熱の小さいコンクリートブロックを断熱材として使用しています。
これによりエンボス機が高温になることを防ぐとともに、エンボス金型から熱が逃げることを防ぎ、効率よくエンボス金型に熱エネルギーを供給することができます。
次にヒーターの制御装置についての詳しい説明です。
現在使用しているエンボス金型の温度を制御している装置は、2本の熱電対で上下のエンボス型の温度を検知します。
そして設定値と比較して制御するわけですが、設定値より温度が低ければヒーターON、高ければヒーターOFFといった単純な制御ではありません。
比例動作と微分動作を合せた制御を行っています。
常にヒーターはON/OFFのパルス出力を繰り返し、温度が高くなるとON時間が短くなるという動作を繰り返します。
比例周期と微分時間のの設定、変更も可能で、これにより応答速度のはやい制御を可能としています。
詳細は書ききれませんので、理科工業㈱(LABOXのページにリンクしています)に直接お問い合せ下さい。
エンボス室の温度管理
最後にエンボス室の温度管理についてです。
㈲スリーサプライ川口では、2台のエンボス機が稼働してます。
金型温度は常に70℃~100℃なのでどうしても室温が上がってしまいます。
冬場は良いのですが、夏場の室温はクーラーでの冷却が追いつかないほどに高くなり過酷な作業環境となります。
高温の室内での作業はオペレーターの注意が散漫になり品質に悪影響を及ぼします。
なにより事故を誘発し危険です。
そのためスリーサプライでは、「空調服」という電動ファンのついた作業着を着て作業を行います。
夏場の暑い場所での作業にはかかせません。アマゾンで購入できます。
空調服は背中に付いた2つのファンが服内に風を送り込むので大きめのサイズが快適です。
3段階調節の「強」にすると寒いと思うほどの体感温度になります。
外から空気を取り入れ、室内からの排熱も行っているのですが、やはり熱いです。
3万円台で購入できるスポットクーラーもあるので、1台備えておくと便利かもしれません。