スクレッパー(ドクター)のはなし
スクリーン印刷の仕上がり具合を左右するのは、刷版、インキ、スキージです。
一般t系なこの考えは間違いではありませんが、超精密印刷や極薄色、表面マットの印刷の場合はインキをコートするスクレッパー(ドクター)も重要な役目を果たします。
完璧に研磨されたスキージを用いたとしても、刷版にインキがコートされた状態にムラやスジがある場合、それは顕著に印刷に現れる場合があります。
もちろん色が濃ければ目立ちませんし、スクリーン印刷の塗膜の膜厚が10μ、20μといった場合も目立ちません。
ところが、薄色のスモーク印刷をはじめ、材料表面処理のための表マット印刷、抗菌印刷などはスクレッパー(ドクター)の影響が出てしまう場合があります。
スクレッパー(ドクター)研磨
㈲スリーサプライ川口での通常のスクレッパー(ドクター)研磨は、スキージ研磨ページで紹介した水研ぎ研磨機でアルミでできたスクレッパーの平滑を出し、800番以上の細かいサンドペーパーで仕上げます。
サンドペーパーは溶剤に浸し、必要以上に削ってしまうことを防止します。
通常のスクリーン印刷業務であればスクレッパーの研磨はこれだけで十分です。
サンドペーパー仕上げでも十分に平滑を出すことができます。
コートムラやスジも目立たない状態まで仕上げることも可能です。
しかし、印刷するインキや材料によってはさらに平滑なインキコートの必要性に迫られる場合があります。
スクリーンインキの粘度調整や仕上がった製品レベルの限度見本により、インキコートが原因で発生する問題を解決する場合が多いのですが、
ムラ、スジは絶対NGという特殊な製品もあります。
今以上の平滑なインキコートをするにはどうしたら良いかを考えてみました。
研磨の極論は「バフ研磨」です。
サンドペーパーで仕上げたスクレッパー(ドクター)にバフ研磨を施します。
スクレッパー(ドクター)のバフ研磨の効果
通常の水研ぎ+サンドペーパーで仕上げたスクレッパーと、さらにバフ研磨を施したスクレッパーを比較してみましょう。
左画像が通常の研磨方法で、右画像がバフ研磨しています。
上写真の比較ではわかりずらいので拡大しましょう。
これがサンドペーパーで仕上げたスクレッパー(ドクター)を拡大した写真です。
きれいに思えたスクレッパーですが、まだ凹凸があることを確認できます。
そしてこれがバフ研磨したスクレッパー(ドクター)の拡大写真です。
光の反射でデジカメのピントが合いません。
仕上がったスキージのエッジが鏡面加工並の平滑性である証拠です。
この2本のスクレッパー(ドクター)でインキコートした時に、それほど差が出るのか?と言われれば…
その差は歴然です。
左写真はバフ研磨したスクレッパーでスモークインキをコートしたところです。
スクレッパーの移動方向のスジが全く無いことが確認できます。
このインキコートの写真を拡大すると確認できるのですがスキージ、ドクターと同方向(平行)にスジを確認することができます。
これは、この印刷機(ミノマット)の駆動がタイミングベルトであるための振動によるものです。
ミノマットでのインキコートはこれが限界と言えるでしょう。
これをシャフトドライブに替えることが可能であれば、さらに1ランク上のインキコートが可能となるはずです。
一歩上のスクリーン印刷技術を目指そうとした時、スクレッパー(ドクター)を除外することはできません。
全てに拘ることで匠のスクリーン印刷技術に近づけると信じています。